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Power Platform で「環境」を作るにはライセンスを1本買えばよい

  • 2021年11月30日

SharePoint Online を業務活用すると、Power Automate でフローを設計したり、Power Apps でフォームをカスタマイズする機会が少なからずでてきます。これらは Microsoft 365(Office 365) の総合ライセンスに含まれているため(実質)無償なのが大きなポイントです。

しかし、当然ながら無償だけに(実際には「Power Automate for Office 365」「Power Apps for Office 365」という Microsoft 365 テナント内での利用を許可するライセンスが付与されており、純粋な「無償」とは異なるのですが)、有償のライセンスに比べると種々の制限が存在します。

そうした制限の一つが「環境を作成することができない」ことです。「環境」とはひとつのテナント内で領域を区切り、Power Platform の設計やデーター、ユーザー権限やポリシー等をその領域単位で管理できるようにする仕組みで、これにより、テナントを複数契約しなくても(同一ドメイン内で)「試験環境」「開発環境」「本番環境」「経営戦略部限定の本番環境」など用途の異なる複数の領域を運用することができます。

環境の概要 環境 は、組織のビジネス データ、アプリ、チャットボット、およびフローを保存、管理、共有する場所です。 さまざまな役割、セキュリティ要件や対象ユーザーを持つ、アプリを分離するコンテナーとしても機能します

https://docs.microsoft.com/ja-jp/power-platform/admin/environments-overview

「Power Automate for Office 365」「Power Apps for Office 365」ライセンスのみで Power Platform を活用する場合、初期状態で用意されている「テナント名(既定)」という環境だけを利用できます。当然、この (既定) 環境にも制限があり、いくつかフローを開発したり、Power Apps で小規模なアプリを組むぶんには問題ありませんが、組織レベルで本格的活用を推進しようとすると、いろいろと課題がでてくるでしょう。

環境の概要 > 既定の環境 単一の既定の環境が Power Apps によって各テナントに自動的に作成され、テナントのすべてのユーザーに共有されます。 Power Apps にサインアップする新しいユーザーは、既定の環境の作成者ロールに自動的に追加されます。 既定の環境は、Azure AD テナントの既定のリージョンに最も近いリージョンに作成されます。

https://docs.microsoft.com/ja-jp/power-platform/admin/environments-overview#the-default-environment

さて、実はここからが本題です。「~ for Office 365」のみのテナント管理者が、Power Platform 管理センターで環境を新規作成しようとするるとどうなるのか?実は操作自体は可能なのですが、下図のようなエラーになります。

これは、環境を新規作成するにはデーターベースの残容量が最低 1GB 必要であるためです。もっとも、上のスクリーンショットでは見切れていますが、オプションで「この環境のデータベースを作成しますか?:いいえ」を指定してもエラーなります。この点がどうにも理不尽に感じますが…こればかりはそういうモノ、と考えるしかありませんね。一応、この仕様についてはこちらに記載があります。

記憶域容量の権利を超えるための変更 新しい環境の作成 (1GB 以上の容量が必要です)

https://docs.microsoft.com/ja-jp/power-platform/admin/capacity-storage#changes-for-exceeding-storage-capacity-entitlements

私は Power Apps / Power Automate ユーザーで、データベース付きとなしの環境があります。 それらはストレージ容量を消費しますか。 はい。 データベースが関連付けられているかどうかに関係なく、すべての環境で1 GB が消費されます。

https://docs.microsoft.com/ja-jp/power-platform/admin/capacity-storage#im-a-power-appspower-automate-customer-and-have-environments-with-and-without-database-will-they-consume-storage-capacity

しかし、逆に言えば、環境を作成するには最低 1GB の容量さえあれば良いわけです。そしてこの条件を最も簡単に満たす方法が「Power Automate または Power Apps の per user ライセンスを 1 ライセンスだけ契約する」になります。

Power Platform は、最初に有償単体ライセンスを契約した時点で、そのライセンス数に関わらず初期容量が提供されます。例えば、Power Automate per user ライセンスであれば、Dataverse のデータベース10GB、ファイル20GB、ログ2GBです。これにより、上記の制限をうけずに環境を作成することができるようになります。

Power Apps および Power Automate プランにはどの Dataverse キャパシティが含まれていますか?

https://docs.microsoft.com/ja-jp/power-platform/admin/powerapps-flow-licensing-faq#what-dataverse-capacity-is-included-with-the-power-apps-and-power-automate-plans

もちろん、素直に「Common Data Services 容量」を契約しても同じ結果になりますが、組織で Power Automate や Apps を運用するのであれば、いずれにしてもシステム管理者くらいは有償ライセンスを保持しておくべきでしょう。例えば、Power Automate per user ライセンスであれば月額 1,700 円程度です。年間2万円強を。ぜひあらかじめ予算に計上しておいてください。

それでは、よいお仕事を。